一人ひとりの探究学習を支える人員は確保できず、確からしい答えに飛びついて調べ学習で終わる傾向や、プロセスよりアウトプットを重視する風潮が相まって、子どもたちの多面的な気づきや学びを引き出しにくい状況がある。
「すべての生徒に優れた伴走者を、すべての先生に補助教員を」を掲げ、生成AIを用いた探究学習の自立化・個別最適化を実現する。
本年度は、教育と探求社の探究学習教材「クエストエデュケーション」の中で、生成AIのサポートツールを使用した実証を行った。
中高生の学びを支援する生成AIを用いた問いかけ設計
学び手である中高生の目線に立ち、探究学習を深めるための生成AIを用いた問いかけ機能を開発した。
生徒の思考が広がるタイミング、アイデアを整理・検討するタイミング、学びを日常と結びつけるタイミングという3つの重要なフェーズに着目し、それぞれに適した問いかけのプロンプトを設計。
AIが答えを提示するのではなく、問いの展開を通じて新たな観点を提供し、生徒自身の発想や対話を促進する仕組みを構築した。
フィールドでの大規模な実証実施
中学校2校の協力を得て開発した生成AIツールを探究学習の授業に導入し、実証を行った。
1つ目のツールは録音や文字起こしを活用し、AIがアイデアレビューや新たな問いを提示することでグループ議論を深める機能を持つ。5組・合計40グループの生徒に協力を得て、議論の活性化への影響を測定した。
2つ目のツールは個々の生徒が多角的な視点で思考を広げるよう問いかけを行い、4クラス30グループを対象にツール未使用(16グループ)と使用(14グループ)を比較し、アイデアの拡散や深掘りを支援する効果を検証した。
多様な授業での試験運用を通じて、生成AIツールが探究学習のどのような場面で有効に機能するのかを明らかにした。
生成AIツールを活用した探究学習の効果を定量・定性の両面から評価
・データ分析に基づく実証の実施
中学校2校において、生成AIツールの効果を定量・定性の両面から評価。アイデアの量や多様性、議論の活性度、発話量などを測定し、ツールの有効性を客観的に分析。
・議論の活性化と課題の明確化
実証①(グループでの話し合いの活性化)では、ツールを活用することで話し合いが停滞しやすいグループでも、ツールが視点を提示することで対話が活性化。
- 生徒アンケートでは「企画の課題点や問題が具体的に見えてきた」と回答した生徒が75%以上に達した。
- 先生のインタビューでも「ツールの提示する視点によって、生徒が声かけをせずに自走する姿が見られた」との評価が得られた。
・アイデアの量と多様性の向上
実証②(生徒個々人のアイデア深化)では、生成AIツールを使用したグループの方が未使用グループよりもアイデア量が増加し、発想の幅が広がる傾向が見られた。
- 生徒アンケートでは、「企画や取り組みに対する満足感」や「新しい能力の習得」など全ての項目において、生成AIツールを使用したクラスの方がポイントが高かった。
- インタビューでは、「AIの問いかけによって自分の考えを広げることができた」「ツールがなければ思考が行き詰まっていた」という生徒の声や、「教師が一人ひとりに問いを投げるのは難しいが、ツールを活用することで生徒が繰り返し問いかけを受けられるのは大きな利点」という先生の声が得られた。
各生徒が所持しているタブレット(iPad/iOS 17)を用いて実証を行った。
| 実証事例名 | 生成AIを活用した先生と生徒のための探究学習支援に関する実証事業 |
|---|---|
| 受託事業者名 | 教育と探求社 |
| 実証年度 | |
| 事業カテゴリー種別 | |
| 実証地域 | 東京都、千葉県 |
| 実証校 | 宝仙学園中学校・高等学校、昭和学院中学校・高等学校、聖学院中学校・高等学校 |
| 対象 | |
| 対象学年 | 中学校1年生~高校3年生 |
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