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【福山市立城東中学校】 個性を尊重し、自立と才能の開花に点火する「オンライン探究プログラム」 STEAMマインドを育む個別最適化されたEdTech探究学習への道

 学校に来られない”不登校”や、学校に来ても教室に入ることを躊躇う生徒のための新たな居場所「きらりルーム」(※1)を校内に設置している福山市立城東中学校。2020年10月、「未来の教室」の取り組みをさらに発展させるため、「SPACE」と「学研」による「オンライン探究プログラム実証事業」のキックオフが行われました。様々な個性を持つ生徒一人ひとりの多様な学びを尊重する学校と、EdTechを用いたオンラインによる探究学習が掛け合わされ、「withコロナ時代の未来の教室に必要な学び」を提供する取り組みがスタートしました。

左から:城東中学校の羽原靖明校長、

異才発掘プロジェクト「ROCKET」初代プロジェクトリーダー・
東京大学先端科学技術研究センター協力研究員・
(株)SPACE/CEOの福本理恵氏、

(株)学研プラス/次世代教育創造事業部の佐久裕昭氏

実証事業を経て教師の見方が変わった1年目。2年目は、個別の探究から自立的な学びへ。


2019年度、城東中学校は「未来の教室」事業のモデル校に採択されました。「きらりルーム」に通う生徒たちが「EdTechによる個別最適な学び」「 STEAM教材を活用した作品づくり」「“東京大学先端科学技術研究センター異才発掘プロジェクトROCKET“のプログラムによる探究学習」と出会い、それぞれの方法で取り組みました。(※2)その結果、知識の定着や学習意欲の向上が確認されています。さらに、生徒や先生に変化が生まれたそうです。城東中学校の羽原校長は「昨年度は24名のうち6名が、自分が所属する学級に通うようになりました。先生の関わり方も変わりました。以前は教室という枠に入れようとしていたのですが、生徒の個性に応じて考えてみよう、少しでも生徒の力になるものであれば取り入れてみよう、という見方を持つようになってきました。これも大きな成果です。」と話しています。


 昨年度「ROCKET」のプログラムを実施した東京大学先端科学技術研究センター協力研究員の福本氏は「個別最適なマインドセットが校内に浸透したことは大きいと思います。昨年度は幾つかの成果も出ましたが、同時に学習を持続・発展させるために必要な要素が見えてきました。特に“探究学習”では、生徒の興味関心を教科の学習や取り組みの持続につなげていくための”支援“や”伴走“が重要になります。心理的なケアを含めながらモチベーションを上げるためのフォローアップにも取り組み、個別の探究から自立的な学びへの展開を実証したい。」と話します。

EdTech+α


 2年目となる取り組みでは、コロナ禍であることを逆手に取り「オンライン探究プログラム」の開発・実施をベースとした「個別最適化されたEdTech探究学習の実現」を目指しています。今回のキックオフでは、その一例が関係者にお披露目されました。興味関心のスイッチを押すための多様なジャンルの動画コンテツが用意されるそうです。


 EdTech「+α」の部分として、昨年の実証から浮かび上がった「支援・伴走」を充実させるために、広島大学の学生が定期的に学校を訪問し学習支援を行う体制が用意されていました。この日は、学生と実証事業に参加する中学生の初顔合わせです。アイスブレイクのアクティビティを通して、物理的・心理的な距離を近づけ、信頼関係を築く基礎を作る機会が設けられていました。初めは緊張していた様子の中学生も、活動が進むにつれ笑顔が増え打ち解けていきます。学生との間に明るく楽しい空気が流れていました。(アイスブレイクは、参加者のマスク着用や消毒、十分な換気等、新型コロナウイルス感染予防策を講じた上で実施されています。)

アイスブレイクで学生と交流する生徒たち

福本氏「勉強をしたくないわけではなく、どう取り戻せば良いのか、どう取り組めば良いのか分からないという”不安”が現れているケースがあります。生徒との対話を通して、そうした不安などを掴みながら進めたい。生徒一人ひとり、興味関心の領域や反応は違います。オンライン探究学習のログと現場の観察を合わせたアセスメントによって、その子に合った方法を探っていきたいですね。」

羽原校長「生徒には、自分の特徴や個性を知り、どう生きていけば良いかを理解できるようになってほしい。こうした取り組みについて、福山市内や、その他多くの方々と共有し、子どもたちの自立をサポートしていきたい。」

 オンラインによる探究学習と間近での支援や観察によるアセスメントを通した自立的な学びの実現。先端テクノロジーと人による支援・伴走の利点が掛け合わされた先に、withコロナ時代の未来の教室の姿が生き生きと描き出されることを期待しています。

「(学生スタッフが来校する日は)絶対、学校に来よう!」


 「きらりルーム」で目にした、アイスブレイクに参加した生徒と先生のやりとりが、キックオフの成果を物語っていました。


先生「今日はどうだった?」
生徒「楽しかった!学生さん、また来てくれるの?」
先生「定期的に来るようになるよ。」
生徒「いつ?いつくるの?」
先生「月曜と金曜だったかな。」
生徒「じゃあ、月曜と金曜は絶対、学校に来よう!」
その生徒は「きらりルーム」のホワイトボードに「月・金来る!」と笑顔で書き込みました。

EdTechと支援・伴走による「オンライン探究プログラム」。
キックオフに参加した生徒の導火線に火がついたことは間違いありません。

城東中学校「きらりルーム」とホワイトボード

※1 広島県福山市では、2018年度(平成30年度)より、欠席者数が多い6つの中学校に「きらりルーム」を設置し、個々のペースや興味関心に対応した様々な学びをサポートしています。
福山市教育委員会HP:「きらりルーム」を活用した長期欠席者ゼロの取組について
http://www.city.fukuyama.hiroshima.jp/site/kyoiku/121944.html

※2 経済産業省「未来の教室」実証事業:個別教育計画とEdTech教材による不登校傾向のある生徒の学習支援
https://www.learning-innovation.go.jp/verify/d0088/


執筆者:田中康平(たなか こうへい)
株式会社NEL&M 代表取締役。幼児~小中高生のICT活用や学習環境デザインの専門家。教育情報化コーディネータ1級。主な実績はこちら
佐賀県を中心に、教育ICT環境整備やICT支援事業等に従事する。2014年4月、ICTスクールNELを開校し、幼稚園・保育園での「ICTたいむ」を開始。近年はブルームのタキソノミー改訂版~デジタル・タキソノミー理論を用いた学習デザインに関する教員研修や研究指定校の助言等を中心に、1人1台の情報端末を含む教育ICT環境の整備・活用のコンサルティング、人財育成、情報モラル教育などに取り組んでいる。





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