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【横浜市立鴨居中学校】コミュニケーションを止めないことで学びを止めない ■取材日:5月11日(月)

 2月27日(木)の突然の休校要請に始まり、この数ヶ月さまざまな判断を重ねながら、子ども達の学びを継続するために多くの教育関係者が力を尽くし続けています。横浜市立鴨居中学校では、コミュニケーションを止めないことで学びを止めないという図式を描き、学びとつながりを止めないための施策を行っています。横浜市立鴨居中学校の齋藤浩司 校長先生にお話を伺いました。

――鴨居中学校が行っている、休校期間の“学びを止めない”ために、EdTech/ICTを用いた教育活動を教えて下さい。

 横浜市は3月3日から休業に入り、春休みを挟んで長期間休業が続いています。学びを止めない大前提として、本校は学びの伴走者でありたいと思っています。本校の生徒たちは、一緒にそばにいて、一緒に歩んでいる人がいることで授業も一生懸命取り組むという特性があるので、コミュニケーションを止めないことで学びを止めない、という図式を描きました。これが大前提です。
 「課題を与えたからやるだろう」「これを見せれば勉強するだろう」という思い込みをやめて、「課題を出すのであれば、どうやったらやるのか」「子どものニーズは何か」を考えコミュニケーションをとりながら進めています。

 最初にYouTubeで「朝礼動画」を発信しました。これは、「学校は開いていますよ」「みなさんのことを気にしていますよ」というのを知らせるためです。
 また、毎日メール配信をしているので、それを活用したコミュニケーションをとっています。各家庭へのメールは、最近はホームルーム的な内容に変わってきています。8時40分に配信している朝のメールには、通常の連絡と先生からの生徒向けメッセージをちりばめています。朝礼動画を撮影したときにはリンクも送っています。
 健康状態もメール配信システムのアンケート機能を使って、メール本文の下にアンケートをつけて、全部読んでもらった後にアンケートに答えてもらっています。アンケートは自動集計されるので、発熱している人はリストに表示されます。発熱している人には電話して健康状態を把握しています。

 学びの部分では、「未来の教室」実証事業でもご一緒させていただいている城南進学研究社のデキタス(https://dekitus.johnan.jp/)とeboard(https://info.eboard.jp/)のアカウントを全員に付与しました。活用している生徒は、3月はクラスで3~4人くらいでしたが、4月になるとクラスで10人くらいになりました。
 まったくやらない生徒もいますが、それは普通に授業をやっていても同じことです。学びの様態はどこにいても同じです。だから、鴨居中はそばにいて伴走するようにしています。自走する生徒には、ちょっと後ろについている感じ。それが本校の特性であり、学校の特性をテクノロジーで補っています。
 選択肢を多くし過ぎないようにし、デキタスとeboardの2つを選択肢として設けたので、保護者の安心につながったと思います。生徒には「デキタスでもeboardでもいいよ」と言っています。かつ、教科書に沿った学習課題も紙で配布しています。

 課題のひとつの目玉として、教科横断の課題を作ろうとしています。40人が一同に会して授業をするというのは、しばらくできないと思っています。そうすると、どんな形にしろ、半分は学校にいても半分は家にいることになります。そこに探究型のレポート作成を持っていこうと思っています。
 基本的な知識や技能は学校で学び、深めたり発展的な内容は自分で考えできるようになってほしいので、そのひとつの練習としてやっていこうと思います。数学と理科が一緒になっていたり、「牛丼の価格から見える経済ってなんだろう」などのような課題で練習して、夏休み明けに本物のレポートを出してもらう、というふうにしようと思っています。レポートの書き方も統一してやっていくと、今後役に立つと思います。レポートの課題のために学びのすすめや方向性を示した資料を作ります。それがまとまったら、担当の先生にその資料を説明する動画を作ってもらって、配信してもらおうと思っています。
 いろいろな子どもたちがいますので、平均の少し下くらいの子たちに照準をあわせて、今年1年は、通常の授業と課題解決をミックスしたレポート、というのを1年間続けていきたいと思います。
 

――やってみての子どもたち、保護者様の反応を教えて下さい。

 概ねやっていることについては、受け入れられていると思います。動画の配信は「親子で笑っています」など、好評でした。そのレベルでいいと思っています。完成度よりは話題の種になればと思います。
 あとは全員に電話する機会をこれまでに2回設けていますが、そこでも子どもと話ができたということで、教員が元気になりました。

 毎朝のメール配信のアンケートでは「元気ですか?」に「はい」か「いいえ」しか回答するだけなので、それ以外に文章を入力できるように、4月下旬からは、Googleフォームを使って相談を受け付け始めました。
 50件近く相談が入っています。3分の1は近況報告で、あとは30通くらいが「学習が進まない」とか「体調が崩れている」「生活リズムが崩れている」という具体的な相談です。相談の内容としては、やはり学習のウエイトが大きいです。子どもの様子を学校に伝えるとともに、「どうやったら課題に対して計画的にできますか」「デキタスの使い方はどうやったらいいですか」というような相談もあります。
 相談内容をExcelにまとめて、学年に共有して対応してもらっています。与えっぱなし、流しっぱなしはよくないので、必要なときには面談をして会って確認しながら話しましょう、ということを先生方と話しています。

 あとはZoomを使って保護者懇談会を何度かやりました。参加者は予想していたほど多くなかったです。生活サイクルになかなか合わないようです。いろいろな時間を設定してやりましたが、なかなか難しいですね。今後は、日常的にオンラインでも繋がれるように努力していきます。

 健康管理は毎朝のメール配信、Googleフォームは24時間受け付け、日中は学校に電話ができるので受け付けています。
 休校期間が長くなってきているので、学校の様子も子どもたちの様子も含めて、変容してきています。だからこそ、コミュニケーションも変容していかないと続かないかな、と思っています。

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――これから実施する学校に向けて、ポイントがあれば教えて下さい。

 コミュニケーションの継続と関係しますが、心理的ケアの部分がとても大事だと思っています。家庭の様態からきているのか、成長段階なのか、学びへの不安なのか、将来への不安なのか。そこを受容することが我々には求められています。
 今後、学習のことばかりに特化して、「授業が…」「カリキュラムが…」「教科が…」となってしまうと子どもがきつくなります。学校が再開したら、生活に慣れる、学習も少しずつ本格化する、その時間とタイミングを学校がどう作るか、が大事だと思います。
 そのためにテクノロジーを使ってできることはたくさんあります。アンケート、動画、オンラインでのコミュニケーション。そこを上手いタイミングで小出しに出していって、子どもたちのためになる手立てを考えていくことが大事だと思います。
 これらのテクノロジーの多くは、今後、学校が完全に再開した後でも日常的に使えることだと思います。子どもと先生のコミュニケーション、学校と家庭のコミュニケーション、学校間のコミュニケーション、小学校と中学校のコミュニケーション、学校と教育委員会のコミュニケーション、これらの間のコミュニケーションをテクノロジーをもっと使えばいいと思います。


執筆者:為田裕行(ためだひろゆき)
フューチャーインスティテュート株式会社 代表取締役、教育ICTリサーチ(https://blog.ict-in-education.jp)主宰。学校向けの教育コンサルテーション、教育テレビ番組や教材、サービスなどの教育監修を行っている。一般社団法人ICT CONNECT 21( https://ictconnect21.jp/ )にてEdTech推進SWGサブリーダーを務める。

■齋藤浩司 校長先生が「教育・学びの未来を創造する教育長・校長プラットフォーム」のオンラインイベントに登壇します。

「答えは現場にある」を理念とする「教育・学びの未来を創造する教育長・校長プラットフォーム」のオンラインイベントに、今回取材に応じていただいた横浜市立鴨居中学校の齋藤浩司 校長先生が登壇します。


6月21日(日)15:00〜17:00。詳細は下記URLからご確認ください。
※参加対象者:学校現場の方(教育長、校長・副校長・教頭、中堅・若手教職員、教育委員会職員。
https://school-platform200621.peatix.com/





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