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【小金井市立前原小学校】同期+非同期のハイブリッドで教室と同じ場をつくる ■取材日:5月14日(木)

 2月27日(木)の突然の休校要請に始まり、この数ヶ月さまざまな判断を重ねながら、子ども達の学びを継続するために多くの教育関係者が力を尽くし続けています。小金井市立前原小学校では、Zoomとスクールタクトを活用して、オンラインで教室が果たしていた役割を作っています。小金井市立前原小学校の蓑手章吾 先生にお話を伺いました。

――前原小学校が行っている、休校期間の“学びを止めない”ために、EdTech/ICTを用いた教育活動を教えて下さい。

 前原小学校では、同期+非同期のハイブリッドでやっています。同期にはZoomを使い、非同期にはschoolTakt(スクールタクト)を使っています。僕はこの両方がないとダメだと思っています。
 今までも前原小学校の教室ではスクールタクトを使っていました。今まで、教室で一緒に学んでいたからできていた「同期」が、教室が使えなくなってできなくなってしまったということです。だから、スクールタクトをメインにして、同期の部分を補完するためにZoomを使っています。

 これまでの2ヶ月半は、子どもたちに自由に学んでもらっています。自由研究に近いです。自己調整学習のモデルのようなものをスクールタクトで作って、6年生84人と先生3人でやってきました。

 スクールタクトで、日付と「めあて」と「ふりかえり」を書けるスペースを用意した自学シートを先生が2週間分(10枚)作って、子どもたち一人ひとりに送っています。1日1枚使うので、2週間で10枚が終わります。

 「めあて」のところに、その日にやることを書いてもらいます。時間割を自分で作っている人もいますし、手書きのメモを写真で撮影して貼っている人もいます。細かいところまでは話をしません。「これから決める」という子がいたりもします。

 「ふりかえり」のところには、その日にやったことを書いていく感じです。まとめ方も、みんなそれぞれです。教科の学習をする人もいますし、ピアノや料理をする人も、ゲームやMinecraft(マイクラ)をする人も、運動をする人もいます。図工の課題で作ったものを披露する動画を貼り付ける子もいました。ゲームのやり方を教え合うような場面もありました。みんなですぐにシェアできるのがいいと思います。

 毎日Zoomで朝の会をしています。そのときにスライドを用意しておいて、新しいことをした人を紹介しています。スクリーンショットを僕が撮って、「この子、こんなことしたらしいよ」というのを全体に対して情報提供をしています。これを同期でやることが、他の人から刺激を受ける場になっていると思います。朝の会は学年全体でやっていますが、Zoomだと入れない子もいるので、毎回レコーディングしておいて、URLをスクールタクトに貼っているので後日それを見ている人もいます。

 やりたかったことは、学びの楽しさを取り戻すことと、先生とか学校がなくても成長できる・学べるようになってもらうことです。
 教科の学習に限らなくてもいい設計になっているので、ゲームでもパズルでもLEGOでもいいんです。基本的には任意参加で、やりたくなければ、やらなくてもいいようになっています。逆に、これくらい開けば、子どもたちは嬉々として学ぶんだ、ということがわかりました。土日もゴールデンウィークもなく学ぶし、止めてもやります。自分で学べるようになります。学校としては、場だけ作っている感じです。

 昨年度(3月)は、終わってないテストやドリルを全部渡したんです。提出義務はないけれど、それを活用してやっている子たちもいました。いまは、新しい教科書やドリルを渡しているので、進めている子は進んでいます。学年として「進めてもかまわないし、学校が始まったら最初からやるから平気だよ」と言っています。国語や道徳は、「読んで感想を書いてみて」という課題を作って、紙でもスクールタクトでも両方できるようにしています。
 プリントを作ったり、漢字を1日2文字ずつやったり、ということをやっている学校もあるようですが、プリントだとやりとりが大変です。渡すことはできますが、すぐに確認する術がないし。できていない子がわからないから、声掛けもできません。先生方は、プリントを渡すだけで学力がつくとは思っていないと思います。プリントにそんなに期待もしていないし授業の代替になるとも思っていません。授業をもう一度やってわからせるつもりでいる、ということだと思います。

 今回の休校期間に6年生がやった学びは、学びの楽しさを先生方が信じているからこそ、こういう場面を作ろうということになったのだと思います。

――やってみての子どもたち、保護者様の反応を教えて下さい。

 みんなに会えますし、子どもはおもしろがってます。Zoomもスクールタクトも最初よりも参加している人は増えています。より時間があるからこそ、習い事やペットのことなど、新しい発見が子どもたちのなかにもあります。学校とは違う姿を発見できるような場面があるのも、ICTならではだと思います。

 保護者からもおおむね好評です。「仕事の都合で、子どもを家に置いていくしかないが、Zoomをつなげっぱなしにしてあるのがありがたい」「Zoomや朝の会がストレス解消になっていてよい」というような声を聞きます。
 Zoomで、8時30分に朝の会、16時に帰りの会を行っています。朝の会が終わった後も、PM4:00までずっと開きっぱなしです。最初は朝の会だけのつもりだったんですけど、終わった後で子どもたちと話していたら、「これ、切る必要なくない?」となって、それからずっとつながっています。ずっといる子は少ないですけど、お昼どきに増えたりします。ふらっと「みんないるかな?」とのぞきにきたり、子ども同士で待ち合わせしたりとかもあります。
 朝も夕方もZoomに入れない子もいるし、曜日によって予定が違う、ということもあるので、ずっと開けておくことになりました。先生3人が時間を分担して、大人が1人は必ずいるようにしています。
 
 先生方の新しい面が見られていい、というコメントを下さる保護者様もいます。授業に縛られないから、ゆっくり子どもたちと話す時間があります、それが子どもにとってもいいのだと思います。

 Zoomは教室の代替です。お菓子作りとか料理をする人がけっこういて、ライブ配信してくれたりもします。僕らはそれを見ながら、「美味しそう!」「Uber Eatsで運んで」とか言っています。Zoomで僕が撮影して、それをスクールタクトに貼ってあげたりもします。外とつながりたいのだと思います。小学生はスマホを持っている人が少ないから、外とつながっていないですから。
 Zoomによって、コミュニケーションのチャンネルができる。どこでもドアですよね。顔も見えて、いつでもいるよ、というメッセージになる。たとえZoomを開けてなくても、「あそこにあるな」と思っているだけで意味があると思うんです。寂しいときにも、あそこがあるな、いつでも会えるな、と思える場所になります。それをテクノロジーで実現しているということですね。

――これから実施する学校に向けて、ポイントがあれば教えて下さい。

 2つのポイントがあると思っています。

 一つはマインド的な面で、平等や公平の観点から「一人でもできない人がいたらやらない」とよく言われますが、基本的には「やりたくてもやれない人がいる」ことの方が問題なのだと思います。
 その意味では「オンラインを開けばできるのに、そういう人たちにやらせてあげないのはいいのか」と思います。「できない人が1%でもいたらやらない」という方針だと、機器とWiFiが揃ったとしても、家庭の方針などの理由があれば、できる人が100%にはならないと思います。だとすれば、それぞれの立場の人が了解する形で進むべきではないかと思います。

 もう一つは、「やりたいんだけどできない」という教員のスキルの面です。前原小学校では、まずはZoomなどのツールで職員同士がつながって、良さを知ってもらおうと思っています。使い倒して、遊び倒して、その先に授業での活用があると思っています。そういうところを通さないと、やらされ感が出てしまうと思います。
 それと、わからないことはICTで調べれば解決方法が出てくることも伝えています。トラブルが起こったら、例えば「パソコン クリック 動かない」とかで検索すればいいですよ、と先生に教えています。これで先生が「検索ってすごいな」と思って、子どもに教えようとなればいいと思います。トラブルシューティングが全部できるようにならないと教えない、というのは先生マインドです。「全部わかる人はいませんよ」「試しながらやっていくしかないですよ」と言っています。こうした部分について、丁寧に階段を作ってやっていくのがいいと思います。


執筆者:為田裕行(ためだひろゆき)
フューチャーインスティテュート株式会社 代表取締役、教育ICTリサーチ(https://blog.ict-in-education.jp)主宰。学校向けの教育コンサルテーション、教育テレビ番組や教材、サービスなどの教育監修を行っている。一般社団法人ICT CONNECT 21( https://ictconnect21.jp/ )にてEdTech推進SWGサブリーダーを務める。





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